え、飛電って株式会社だったの?(仮面ライダーゼロワン第9話「ソノ生命、預かります」感想/批判)
仮面ライダーに変身した滅によって完膚なきまでに叩きのめされたバルカン。唯阿によってすぐに運び込まれた病院には、ヒューマギアの外科医がいた。「すぐにオペをしなければ命に関わる」というドクター。滅亡迅雷.netによる被害が大きすぎる故、他のドクターの手を借りている時間はない。そんな中、ヒューマギアの暴走を止めるため飛電インテリジェンス副社長である福添が緊急措置を発動する。「病院のヒューマギアを全てシャットダウンしろ!」果たして、諫の命は救われるのか―――? そして、暴走するヒューマギアと人を助けるヒューマギアとの間で葛藤する或人が、最後に下す決断とは?
生命と書いて“いのち”*1!
いやー、今回もツッコミどころ満載でしたね。
色々と突っ込みたいところではあるのですが、ゼロワン世界に株という概念が存在する滑稽さの一点に絞り、ゼロワンを考えていきたいと思います。
すでに株主や購入者から3000件の問い合わせが来ています。
飛電の株価も暴落。
ストップ安の状況です。
これはシェスタが医電の滅亡迅雷.netの騒動を受け、分析し、飛電の現状を述べたセリフです。
まず単刀直入に言うと、ストップ安になったのであれば株は暴落しません。
株の暴落を防ぐために一日の内で制限された値幅の下限をストップ安と言うのです。
つまりは飛電社としての危機感出すために、なんとなく株についてそれっぽいこと言わせただけのセリフ。
クウガで例えるなら、一条さんが第9話になっていきなり「拳銃を撃つには発砲許可が必要なんだ…」と言い出すようなものです。
いくらリアルっぽいことを並べて説得力を持たすにも変なタイミングで発しては「大分前から発砲してたやんけ!」とツッコミを入れられる要因にしかなりません。
会社のピンチにはもっともらしい言葉ではありますが、我々をリアリティで引き込むにはあまりにも逆効果で、がさつな台詞だと思いました。
例えで出しました警察の銃周りに関する決まりより、株に関することは中学・高校の授業で学びそうなことなんですけど、テキトーに書いてるんでしょうか。
さてさて、この第9話に来るまでにゼロワンではヒューマギアの事件が散々起きましたね。
第1話
クスクスランドが半壊した公では初のヒューマギア襲撃事件
第2話
飛電社襲撃事件&周辺での2体の襲撃事件
第3話
床屋周辺で起きた複数体の襲撃事件
第4話
デイブレイクタウン外の修学旅行生襲撃事件
第5話
漫画家宅で起きた複数体の襲撃事件
第6話
アフレコスタジオ周辺&オーディション会場での複数体の襲撃事件
第7話
バスケ会場近辺で起きた2体の襲撃事件
これらは途中、社長の説明会見があったりしたものの、株主にとって株の投げ売りに発展するほどの事件足り得ない、
第1~7話の事件<第8・9話の医電事件
という認識になってるということなんです、ゼロワン世界の世論では。
そんなのピンと来ませんよね。
書き出しながら「1クールの刑事ドラマなら、同一犯の被害件数がここまで来ると対策すら練れていない警察がとっくに問題視されるのにな」と改めて思ってしまいました(笑)
仮に医電の一件だけではなく、これまでの一連の事件の積み重ねで、株の暴落()を引き起こしたとするにも、間にクソ寒ギャグ記者会見、デイブレイクでヒューマギア暴走の真相開示があったことなども鑑みることにもなりますから、株主が今回の件で株を手放し始めるというのはあまりにも遅すぎるという意味で考えられない話でした。
ましてや、視聴者と違ってゼロワンの活躍を世間は全てを把握していませんし。
株主の目線に移しても違和感は残ります。
「持ち株の会社が問題になれば株なんて売ってしまえばいい」という簡単な問題で済むわけもなく、資産運用の目的であっても株の価値が下がるようなことが起きれば所有者は黙っていません。
会社の責任を問う臨時の株主総会の開くことが余儀なくされてもおかしくありませんし、別の病院も襲撃されたとなれば、ストップ安を叩き出した翌日も、さらにその翌日も株価は下落し続け、本当に暴落してしまうでしょう。
次回はその名誉回復のために、副会長が音頭を取って新しい飛電社のPVを、大物俳優を起用して撮影する話のようですね。
しかし、そのために株がどうのと引き合いに出すことで流れを造られても、株を買い戻させるほどの信用の回復力は好印象のPVにはなく、「実際に改善されている様を世に見せることが必要なのでは?」という新しい疑問を生みかねません。
副社長は或人が医電でのヒューマギアを起動し続けることで会社の評判がこれ以上落ちることを恐れたり、再起動を独断でする或人社長の失墜を期待しましたが、会社の問題を株価を踏まえて語るのであれば、そんなことで済まされる問題ではないのです。
株が暴落しては、あの大企業*2であってもどこかに買収されてしまう恐れすら出てきます。
もしかしたら、第10話で株主総会や買収にむいて言及することもあるかもしれませんが、「もう暴走しない」という現実から目を背け、商品の優位性だけを打ち出す企業など、株主には視聴者同様に嫌悪されるべき会社と言って過言ではないと思います。
AIを題材にしたサイエンスフィクションに舵を切りたいのであれば、安易に株なんて言葉を使わない方が良かったのではないでしょうかね。
もっと言えば、株について触れなければ「子供向け」として守られる余地があったのに、より「子供騙し」として作品が傾いてしまったんじゃないかなと。
話は少し変わり、ゼロワン周りのシステムの権利について。
ゼロワンは飛電“家”の私財ではなく、飛電“社”の資産なんだと思われます。
わざわざ会社で開示された遺書の文面に社長の地位とゼロワンの資格を与えるとあれば、そう捉えて問題ないでしょう。
会社内にラボがあるとなれば、運用費だって会社持ちです。
(最上階の電力代だけ或人に個人請求が行くなんて裏設定があったとすれば馬鹿馬鹿しい話ですが)
会社の資金がゼロワンの開発費、運用費となれば、遺書の開示まで多くの幹部がゼロワンの存在を知らなかったことは先代から続くワンマン社長の独裁です。
独裁のきらいがあることは前々から思っていたところですが、今回の言及により「子供向け番組」として守られる部分がなくなり、ゼロワンの資金繰りに株の資本も含まれることになってしまったことで経営においての酷い一面が顔を出してしまいました。
ましてや正当な使い道であったヒューマギアの開発費もデイブレイクの真相が最近まで伏せられていたのですから、10年以上に続く根深い信用問題になっていきます。
ゼロワンのように会社経営に携わっているヒーローといえば、アメコミではバットマンやアイアンマンなどがいます。
彼らはあくまで会長や社長としてヒーロー業をこなしているのではなく、どこかの社長なのに新入社員!*3と違い、勝手に会社のお金をヒーロー業に割り当てずに私的な財産から捻出し、行動を起こしています。
個人で動くヒーローであれば問題ないのですが、株式会社が造ったものであるならば、会社の資産であるゼロワンの存在を公にし、株からも運営費を当てていることを説明しなければなりません。
でなければ、不破の言う通り「隠蔽体質の飛電」を否定することはできないでしょう。
ブレイキングマンモスのフォローのつもりで足した設定かも知れませんが、例え、災害用の救助ロボ開発であった*4としてもイズだけが知り、公にしなければ、ただの不当な資産流用で造られたものなのです。
国の不透明な税金使いを私たちが許さないように、株主にもそれは許されることではありません。
或人は包み隠さないことを不破にゼロワンの正体を明かすことで示しましたが、未だにイズ以外の会社の人間が或人のゼロワンとしての行いに言及しませんし、市民もゼロワンの認識を一切語りませんので、判断がつきにくいところなんですが。
もし、この状況下でもアイアンマンのコピペ批判を恐れて「私が仮面ライダーゼロワンです」せず、世に向けて発信していない曖昧な社長を描いているのであれば、くだらない話ですよね*5。
公務員ライダーでなくても、
「株式会社 飛電インテリジェンス」のゼロワンであれば、社長だけのものでなってはならない
医電にいるヒューマギアのON/OFF問題*6も相まって、倫理どうこう以前に企業としての在り方の脆弱さを露呈してしまう第9話でした。
“他人から集めたお金で変身する”という一見ヒーローにとっては都合の悪そうな設定も、ちゃんと向き合ってお話作りをすれば全く新しい仮面ライダーになり得たのに、話題性としてだけで社長ライダーを創り、お茶を濁し、起こりうる問題から向き合おうとせず、令和ライダーに着工してしまった制作が残念でなりません。
飛電は個人事業ではないのですから、社長業、強いては経営学の権威も監修に入れるべきではなかったのでしょうか?