ルナ太郎の腹筋崩壊ブログ

私は…仮面ライダーゼロワンの気になった所を大人げなく殴り書くのが仕事だから!

パイロット版と初デートは100点を取りに行け(仮面ライダーセイバー第1話「はじめに、炎の剣士あり。」感想)

と、言っていた、お婆ちゃんがな。(倒置法)

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続かないかもしれませんが、私なりに思うところが多かったのでセイバーも感想を書いてみることにしました。

仮面ライダーは子供向けの番組であり、大人がやんや横から言うものではないというのは理解しつつ、このブログのモットーを「大人げなく殴り書くこと」に設定してしまったので、本来、初回に対して寛容に見て良いところを酷く厳しい見方で書いております。

ご容赦下さい。

 

 

腐食していく街。

正体不明の剣士と怪人との戦い。

そして消える少女。

必死に手を伸ばす幼き日の自分。

手には不思議な本――――小説家の神山飛羽真は15年前から同じ夢を見ている。

成長した自分の手には夢に出てきた赤い本がある。

ただの夢とは思えない不思議な夢。

何か大事なものを失くしているのではないかという喪失感。

そんな中、飛羽真は異変に巻き込まれる。

その異変の中で、聖剣と出会い運命が大きく動き出す。

www.kamen-rider-official.com

 

 

記事のタイトルにも付けました通り、パイロット版、いわゆるそのシリーズのフォーマットにもなる第1話は、まるで愛しいあの子と次のデートに繋がるように100点で演出しなければならない初めての共有時間だと思うのです。

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突如醸し出される恋愛系アフィブログ

口説かれる側の女子は、すなわち視聴者こと現実世界の仮面ライダーに夢中な私たちであり、野球部員に言い寄られるととりあえずは一回デートしちゃう野球部フェチと言ったところでしょうか。

その野球部フェチ…もとい仮面ライダーフェチの私たちにとって『仮面ライダーセイバー』はどう映されるべきだったのでしょう。

面白ければ良いのか、伸び代が感じられたら良いのか、仮面ライダーらしさがあれば良いのか。

 

『ゼロワン』を酷く批評してきた当ブログですが、そんなゼロワンに比べてセイバーはどうだったのかを踏まえつつ考えてみたいと思います。

 

 

 

パイロット版は初デートみたいなものだと例えさせて頂きましたが、全くの冗談で言っているつもりはありません。

『ゼロワン』は言うなれば、格好付けだけは一人前、得意分野のバッティングセンターに連れて行かされ、一方的にひたすら打つところを見せてくるような押し付け型のナルシストと言った印象で、自分は良いヤツなんだと語りたがる割にモラルに見合った言動を取らない、人柄が不安に残る第1話だったように思います。

『セイバー』は、格好良く見せようとするところはゼロワンに似ているんですが、自己紹介がとにかく長く、彼のプロフィール紹介で一回目のデートが終わってしまった印象でした。

しかしながら、危ういゼロワン、説明過多のセイバー、初デートの感触だけでどちらの彼とまたデートしたいか問われるならゼロワンくんの方が選ばれる存在だったと思います。

セイバーくんが野球部でなかったら、私は2度目のデートを断るでしょうね(笑)

 

「第1話がイマイチなぐらいなんなんだ」と思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、ゼロワンにとってもセイバーにとっても初デートは「これでもくらえ!」と私たちに最初に向けられた入魂の一発なのです。

これから私たちに強い好意を寄せてもらうため、気合いを入れてプランを組み、エスコートを心がけ、必死に盛り上がる話題を用意しようと考え抜かれたもの。

つまり、作品のポテンシャルを見定めるべきは彼らなりの渾身のこの初手なのです。

シリーズが提示する第1話というのは彼らなりの100点のはずなのですから。

 

もちろん、例外はあると思います。

肩に力が入るあまり、初デートがめちゃくちゃになってしまった人は次のデートから巻き返すこともあるかもしれません。

とは言え、普通であれば初デートから回を重ねる毎に緊張感は薄れ、こだわりも段々と雑になっていき、最初に片鱗が見えていた悪い部分は隠されることもなく作品の問題点にすら発展することの方が起こりうる現象です。

 

(そろそろデート例えが苦しくなってきました…)

 

ゼロワン最終回付近で見られるようになった「ゼロワン、1話目は良かったのに」という感想がまさにそれで、格好つけは良いとしても、或人のヒューマギアに対する矛盾した言動や倫理観の気持ち悪さは1話から感じ取れた懸念から遥かに膨れ上がり、最終的に酷い評価にまで行き着いてしまったと思います。

先ほど述べた 1話だけで見れば「セイバーよりゼロワン」という私の所感は、作り手の前評判を差し引いても1話で気になった違和感を今後払拭してくれるかもしれない可能性と一丁前の格好付けにキラリと光るこれからへの期待が感じられたが故なのです。*1

対して『セイバー』は悪い意味で一度もライダー作品の経験がないようにさえ思えてしまうぎこちなさがあり、格好つけ以前に尺に対するペース配分の悪さが目立ち、第1話だけを見ると視聴者を没入させることなく作品に変に客観性を持たせてしまったように思いました。

 

一年間付き合っても面白くなさそう、それが『仮面ライダーセイバー』第1話の感想です。

 

 

 

世界観を出し惜しめ

本の世界…現実世界の隔離されたファンタジー世界のCGも演出も頑張っていたのに、何故没入できなかったのでしょう。

それは冒頭の壮大なCGとストーリーテラー的人物タッセルのインパクトとアジトの浮世離れ感が先に来てしまったせいだと思いました。

 

最初にファンタジー世界と強烈なキャラクターを見せることで視聴者の心を掴もうという意図は分かります。

ですが、別に何も最初の1分で心を掴もうとしなくて良いと思うのです。

これから2時間の映画が始まるわけではないのですから、頭からだれないように視聴者の集中力を絶やそうしないことに重きを置かず、シリーズへの期待は1話全体で感じさせれば問題ないでしょう。

 

もし、ミラーワールドから神崎史郎のストーリーテリング龍騎が始まったら。

もし、サガラがヘルヘイムの森で意味深な事をつふやきながら始まったら。

後半で突入する特殊な異世界のフィールドのインパクトが薄れると思いませんか?

タッセルは今後のフォーマットとして冒頭から定着させるために出すにしてもCG部分に関しては出し惜しみして、ファンタジー描写は後半に取って置いて、後でふんだんに見せれば良かったように思うのです。

世界観のピークは冒頭と言っても過言ではありません。

主人公たちがこのファンタジー世界に目を丸くするシーンがありましたが、そこで視聴者も同じタイミングで感動させるべきなように思いました。

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『ゼロワン』がいきなり素体のヒューマギアが映るCMを見せ、空飛ぶテレビ、超超高層ビルと言ったように現実ではまだ実現されていないものを次々と見せたのはこのシリーズの舞台が近未来だということを一刻も早く提示するためのものであって、世界を行き来する『セイバー』ならそこを先に明示する必要はないでしょう。

主人公が異世界の住人でない限りは『不思議の国のアリス』や『千と千尋の神隠し』と同じように現実世界から迷い込む世界の順に見せるのが効果的のように思います。

 

アジトの絵本屋も最初は地味で冴えないレイアウトにしておいて、事件にアジトも巻き込まれて独自性あるものになるとか、事件に感化されて思いきって浮世離れしたレイアウトに変えるなどにした方が最初の地味な現実世界と後で出てくるファンタジー世界のワクワクするようなコントラストを1話でもっと楽しめたろうになぁと勿体なく感じましたね。

 

 

 

メインキャラはとりあえず悪いヤツじゃないぐらいでいい

『セイバー』第1話では主人公 神山飛羽真について描くことに重きを置いたように思います。

これはプレサイトの人物紹介です。

 

本作の主人公。

小説家であり、“ファンタジック本屋かみやま”の店主。

本が大好きで、本のことを語り出したら止まらない。飄々としているが、熱い一面もあり、“約束”を何よりも大事にする。

相手を否定せず、すべてを肯定してあげるやさしい性格の持ち主でもある。
炎の聖剣“火炎剣烈火(かえんけんれっか)”と運命的な出会いを果たし、世界を救う仮面ライダーとなるが、夢によく現れる“謎の少女”が、彼の運命を大きく変えていく。

www.toei.co.jp

 

 紹介文を1話でほぼほぼ描き切っていますね。

…で、それ以上のことを知れましたか?

こんな文章で表せる数行のことを膨らせずに描き切るだけしかできなかったのでしょうか、このEDダンスを除く20分強で?

続いてメインヒロイン 須藤芽依の紹介はこうです。

 

小説家・飛羽真を担当する、新人編集者。

好奇心旺盛だが、興味があるのは楽しいこととSNSのみ。

ギャルがそのまま社会人になったような性格。

しかし、好奇心と行動力は誰にも負けない。

 

うーん、「ギャルがそのまま」と言うところでフラペチーノ吸いの小道具に用意されたんだなぁぐらいで、本編からは他に何も感じませんでしたね。

 

主人公の「約束を何よりも大事にする」という説明に関しては

 

・原稿の締め切りを守る

・ワゴン販売を営む夫婦の注文を守る

・迷子になった子供に家族の再会する約束を守る

・ヒロインの好奇心を守る約束を守る(一方的な勝手な約束)

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この4つのエピソードで彼の特徴を示したわけですが、こんなジャブを数発繰り出すくらいならゲストの子のエピソードに焦点を絞って、怪人を倒すことが多段的にゲストの子との約束をいくつか守っていたという仕掛けを作るなどの工夫も出来たはずです。

例えば、「実は子供側にも自分の誕生日に両親に感謝の気持ちを伝える手伝いを頼まれていて、飛羽真はその子のためにオリジナル絵本を作って渡す約束をしていた」とか。

 

大人には作家が締め切りを守ることで意外性を見出だせるかもしれませんが、作家が納期日を守ること、店主が注文の品を用意することは子供にとって当たり前の話に映ってしまわないのかなと思ってしまいます。

ましてや、約束を守ってくれることがヒーローたる必須条件のように思われがちだと思うので、主人公の常人にはない誠実さを際立たせないのなら、何か「守る必要性の無いような約束」を1つ守らせるポーズを取るだけで無駄撃ちせずとも達成できるのではないでしょうか。

例えば、指切りげんまんを子供として「針千本飲ます」のフレーズに異様な覚悟を示してしまうとか。

 

そして、個人的に気になったのはやはりメインヒロインちゃん。

自己中心的な描写が目立ちましたね。

このキャラクター性は全て何事にも肯定的な主人公を引き立たせるための愚行を繰り返す装置でしかなく、周囲を気にしない性格が物語に良い流れを作らないようではただ非力なだけのお飾りヒロインになってしまうと思います。

この無礼な物言いなどとは別に愛されるべき良いところがある、というのも示せないようでは1話の印象があまりよろしくありません。

大事な第1話でルックス以外に好感が持てないというのは誰にメリットがあるのでしょう?

『セイバー』でヒロインの成長譚もしっかりやるつもりならいいんですが、そんな計画性すら感じない安直な描き方に見えて残念でした。

 

せっかくなので、こちらもゼロワンと比較して見ましょう。

ゼロワンのヒロイン、イズは起動開始して間ものない*2ということもあり、失礼な物言いや上手くコンビネーションが取れていないことがアンドロイドというキャラクターも手伝って、後に彼女の成長譚として描かれる今後の保証のようなものがありました。*3

なので、とりあえず可愛く、そこまで憎たらしく思えるような描写さえなければ1話としてヒロインなりに必要な分の描写は完遂できていたのです。

主人公の或人は1話の終わりまで見てしまえばあべこべですが、序盤に遊園地の係員ヒューマギアに挨拶するシーンを設けて、ヒューマギアを人間に近しく扱っている描写はヒューマギアを特別視していることを示す手際の良いシーンでした。

(社長就任は回の終わりにするので職務云々の話は置いておいても、このシーンがさほど視聴者の胸に残っていない上にこの後、ヒューマギアのお笑い芸人を下に見るような発言やマギア化した腹筋崩壊太郎のことを気にせずドテッ腹に風穴を開けて悲哀と誠実さが色々とダメではありました。)

 

ここでさらに『仮面ライダーダブル』の第1話での主人公とヒロインの描き方についても引き合いに出してみようと思います。

メインヒロインに位置する鳴海亜樹子は今回のメインヒロインに似ていてギャーギャーとうるさく、振り切り過ぎている分、下手すれば『セイバー』のヒロイン須藤芽依はまだ綺麗どころとしての体裁が保てているので好かれそうです。

しかし、芽依の場合、内面的な第一印象が悪すぎてそのまま巻き返せず終わってしまいますよね。

亜樹子の登場は第1話の導入部、プロローグが終わり主題歌明け、風都にやってくるところです。

風車が各所で回ったりと亜樹子と一緒に視聴者も風都にやって来る疑似体験のようになってる構成も素晴らしいのですが、始まってすぐすれ違う亜樹子に挨拶する小学生と、それをにこやかに返す亜樹子が映されるのです。

もうここで「こいつ、悪いヤツじゃない」という第一印象が、下手すれば私たちに意識さえさせることなく視聴者に植え付けられてしまうんですよ。

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あとはこの後、いくら変顔しようが、スリッパで主人公の頭を引っぱたこうが、「乱暴なヒロイン、三の線のヒロイン」という印象に「根は良いヤツ」という認識が付いてくるのです。

 

翔太郎の場合、逆でキザなナルシスト風に亜樹子に話しかけるシーンというマイナス印象から始まるのですが、依頼人に対して真摯に対応するところを見せることで先ほどのギャップで「依頼を受ける」という探偵として当たり前の行為が良い印象に映ってしまうんですね。

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本気になった時のギャップを狙ってサボり癖などいい加減に描きすぎるとかえって悪印象になりますが

(フィリップはイズに近い物知らぬ子の成長譚の狙いがあるので無理に良く描く必要もないのは同じでしょうか)

 

なので、セイバーは肩に力を入れすぎずに主人公のプロフィール上の説明書きを全て見せようと広く浅く撮るのではく、必要最低限だけ描いて後は「このキャラクターは良いヤツだ」と思わさざるをえないシーンを作れば、何度も良い人げなやりとりを見せずに済んだと思います。

視聴者もライダーになる以上は良いヤツだという前提が多少あったり、そうは見えなくてもこれから成長していくだろうという予想があるので、先を急がずに良い人かどうかこれからいくらでも書いていけばいいんです。

『ゼロワン』は或人が倫理観として外れてないであろうと視聴者の前提に甘え、善行を描かなすぎたのでそこは相反した印象がありましたね。

そうして自己紹介パートを短縮していけば、空いた尺で他のキャラクターの良い面も見せられる構成になり、『セイバー』の構成力に今後に期待できたように感じました。

 

 

 

ゲスト…キャラ…?

 

飛羽真たちと一緒にワンダーワールドに飛ばされてしまった少年・亮太を演じてくれた西山蓮都くん。

キッチンカーでクレープを売っていた亮太のお父さん・亨役の榎木薗郁也さんそして亮太のお母さん・美沙を演じたのは今野杏南さんでした。

本の怪人・メギドたちの攻勢により生き別れになってしまう、という役どころで合成カットも多かった撮影でしたが初めての被害者として視聴者に方に作品の世界観を伝えなければいけない大事な役を三人ともしっかりと演じてくださいました。

 

ゲ…スト。

 

ゲスト?

 

…モブじゃなくて?

ちょっとエキストラ奮発したとかそんな話ですよね?

 

そりゃ、キャスト側も告知忘れる出番っぷりですよ。

 

再三、今回の記事で言わせてもらってることですが、別に主人公の紹介に徹する必要はないですし、他者とのコミュニケーションで結果的に主人公のキャラクター像が分かりやすくなることもありますから、ちゃんとこの一家がもっと映えるお話作りに注意を払うべきだったように思います。

今後、この調子でオープニングも増え、さらには乱戦に備えて様々なライダーが登場するのであれば、ゲストを描くというのは到底不可能のように感じました。

 

 

 

 

力みすぎた怪人との問答

 

飛「やめろ!街とみんなを元の世界に戻せ!

 

ゴ「フッフッフッ…それは無理だ。

  まもなく本が完成する。

  この新しい本が新たな世界を創造するのだ。

 

飛「本で世界を創る?

  確かに、本には世界を変える力がある!

  だけど!それは人々を幸せにする力だ!!

 

ゴ「人間如きが何を言う!

 

飛「その人間が描いたのが本だ!

  人は物語を創る力を持ってる!

  俺は必ず街を元の世界に戻す!!

 

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確かに…!

ゼロワン寄りは噛み合ってる!!

…だけど!

ぼんやりして話があまり見えてこないんだ!!

 

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人類の未来を笑われたのに夢を笑われたと誤解する主人公

 

それに初変身だからと言って、問答に力入れすぎじゃないでしょうかね?

ゼロワンも変身前はこんな力み方の問答を敵と定期的にしていただけにもうお腹いっぱいという感じがありました。

これは早くて1クール目終盤、下手すれば後半にラスボスとやったって良さそうな圧のある問答です。

 

そもそも、シリーズが始まったばかりでここまで本を熱く語られても、視聴者との間に本に対して温度差がありますよね。

最初のメタ的なタッセルからの台詞からも「本は凄い」という裏メッセージだけはヒシヒシと伝わるんですが、第1話の構図が主人公紹介メインで本を読みたくなるような話運びとは決して言い難く、本の凄さを証明してくれないので、何話かに渡って本の重要性を我々に訴えかけて理解を得てからやるべき問答のように思いました。

 

最初なのですから子供との約束を守るためとか、子供の創造する力を否定させないためにとかもっと安直な理由で良いんじゃないですかね。

今言ってることはこれから主人公の信念として変わらなそうなだけに序盤からここまでフルスロットルだと、この思想を元に啖呵を切られる度に飽きてしまいそうな気がします。

 

話がぼんやりしているので気付きにくかったかもしれませんが、この問答の前半まで主人公の全てを肯定するという特徴が出たぺこぱ肯定構文なんですよね。

唐突な本の役割論争で分かりにくいんですが、一応は本好き以外にも主人公の特徴を踏まえてはいるんです…が、だったら後半の否定めいたくだりがない方が分かりやすいような?

「人間如きが」と言われて、そこからは人をどう肯定するのかという話だったのですが、主人公の流行りによったような台詞が会話劇にしたって上手く機能してないんですよ。

 

先ほど、主人公の紹介は1話に納めきろうとせず、回を重ねながらやっていけばいいと述べましたが、『仮面ライダージオウ』では一般市民の意見をいつかの自国の民の才能や意見として受け入れようとする主人公を、『仮面ライダーオーズ』では得体の知れない腕の化け物でさえも自身と関係があるとして背負おうとする特殊な思考を持つ主人公像を1話からしっかり描いていました。

流行りのお笑い芸人に乗らなくても肯定する主人公ライダーは前々からいましたし、自己紹介しきれずとも、視聴者に人たらしにも思える主人公の魅力だけはしっかり見せることで「このシリーズ見ることで彼の一年を見てみよう」と思わせられます。

むしろ、第1話で大事なのは主人公に私たちをたらしめてくれることなんですよね。

しかし、申し上げている通り、『セイバー』第1話から感じ取れる主人公にしかない良さというシーンは皆無に近く、何かしらの効果を狙ったであろう飛羽真のキャラクター像はほぼ魅力へと変換されないまま終わってしまったように思います。

やはり、本や人類など大きい主語で主人公を語らせるのではなく、最初はスケールを小さく、ゲストキャラの子の誰もが見て分かる短所を怪人が否定したところに飛羽真が間髪入れずに反論し、子供を肯定してあげるなどして優しさを見せた方が視聴者にも主人公の肯定キャラが迅速に定着したかもしれません。

 

 

 

EDダンスって要る?

仮面ライダーにエンディングダンスが必要なのか?という問いではなく、第1話という色々と語りたい、描写したいことが多い中で無理してでもダンスパートを入れる必要があったのか?という意味合いの疑問です。

仮面ライダーにどんなタイミングでどんなエンディングダンスが挿入されるべきか、前例がない以上、答えは私にも分かりません。

しかし、『セイバー』のダンスを見た時に、シリーズとしての新しさは確かにありましたが必要性は全く感じられず、映像のクオリティの高さに圧倒されることもなく、一緒に踊りたくなる中毒性もなさそうで、「前例がなかったものが初めて付いた」という意外性、ファン目線的な話題性でしか存在価値がなかったように思います。

歌やダンスは良いと思うんですけどね。

1話からフルボッコな感想で申し訳ないんですが、初回をとにかく見てもらうための一つの目玉として設けられただけという印象です。

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心配なフォーマット

初回だけあってファンタジー世界の描写はすごいお金のかけように感じましたが、これが今後も継続していけるかは他の作品を見てもネガティブにしか考えられないのであまり心配もしていません。

セイバーの初変身で見せた背景から丸っとCGにしてしまう、いわゆる“バンク”演出も、キバで既にやっていましたし、前例がないわけではないので今後続いてもここに嫌悪感を持たれない気はしています。

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個人的に心配なのはタッセルです。

タッセルという語り部は2作前の『ジオウ』のウォズを思い返すと、イケメンでもなく、仮面ライダーにも変身せず、語りにメタ性がそこまで強くないためインパクトも薄いので、ジオウを見た特ヲタにとって『セイバー』の盛り上がりに一役買えるか心配になります。

今後、本編の頭とお尻に出てくるだけだって魅力的に映らないとノイズになりえますからね。

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私は嫌いじゃないですけども。

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また、実在する本の物語から本編のストーリーに絡めるという形式も『セイバー』のフォーマットになりそうでしたが、今回登場した『アリババ 40人の盗賊』、『家なき子』の一部場面がどんな内容かは分かるものの、作品の魅力が全くと言っていいほど伝わりませんでした。

『セイバー』を介して子供に本を薦めるどころの話じゃない気がして、先行きが不安です。

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セイバー1話を見逃がして見ようか迷ってる君へ

 

「見なくても大丈夫」

 

私はこの言葉を贈りたいと思います。

見逃した人がこのブログ記事にどうやったら辿り着けるのかという話ですし、こんなにもネットで見逃し配信が充実しているのに未だに見るかどうかで迷ってる人とは正直お近づきになりたくはないのですが(笑)

 

来週の頭にタッセルが1話のおさらいをしてくれるでしょう。

EDダンスも見ていない時間のまま生きているのが勿体ないとは言えない出来です。

初変身も第1話ならではのプレミア感はなく、なんならバンク仕様を匂わせる上、お金をかけたCG戦もブリッジが雑で唐突なスケールの大きい戦闘に不可解な導線と言うか。

初変身前の怪人との問答も全然心に残りません。

主人公とヒロインのキャラクターについては紹介文以上の新たな発見もなく、公式を見れば事足ります。

なんなら、ヒロインに関しては第1話を見ない方が良い印象から入っていけるかもしれませんよね。

 

根拠を簡単にまとめて言ってしまえばこんな感じです。

仮面ライダーにとっての歴史的1ページになりそうな高まりは新シリーズが始まったという以外に存在しなかったように思います。

希望が持てそうなのはチュート徳井似の「ただのホモサピ」が印象に強いライオン股がりニスタ君(長い)です。

住む世界の違う人間がこちらの社会を知り、戸惑う 、まるで『ゴースト』のアランのような存在で、よそ者展開としての膨らませ方はある程度約束されているだけに、是非、定型に収まらず、それ以上の何かを模索してもらいたいと願っています。

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『ゴースト』の時は御成のようなキャラクターに恵まれ助けられた節もありますが、あそこまで突き抜けそうなキャラクターは1話に見られない分、愛される印象的なキャラクターにいち早く『セイバー』を牽引してもらわないと浅い層や『ゼロワン』から仮面ライダーに距離を置こうとしている*4人の気を変えられないように思います。

 

自身のライダーに先代がいること、自分が赤のライダーで2号が青のライダーというのは龍騎ですし、最初の合戦シーンや迷子の子を助ける第1話は鎧武を彷彿とさせました。

それらはこれからセイバーでライダーバトルが行われる目配せのように感じたのですが、肝心の1話そのものはエグゼイドのに近い印象でした。

巨大敵を相手にしたからでしょうかね。

 

…とまあ、初めの方で話しました通り、1話のスタートがそこまででも、ここから伸びていくパターンは無いなんて思っていません。

しかし、誰が言ったか『セイバー』は『ゼロワン』に比べて子供に対するウケを気にしているのであれば、もう少し単純明快な作りでも良かったという無念な思いはあります。

『ゼロワン』のせいで「人助けしてるからOK」みたいなハードルが下がりきるというシリーズの相場の荒れっぷりですが、大の大人から見る第1話だけの評価としては「乗り気じゃないなら見る必要なし」程度かなと思う次第でした。

 

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(デート例えはどこ行った)

 

*1:まあ、期待はすぐに裏切られるけど

*2:実は是之助に色々教わっていたことが分かる

*3:その保証はあんまり守られなかったけどね

*4:風評被害