ルナ太郎の腹筋崩壊ブログ

私は…仮面ライダーゼロワンの気になった所を大人げなく殴り書くのが仕事だから!

近年の若者の読解力低下問題(仮面ライダーゼロワン 第14話「オレたち宇宙飛行士ブラザーズ!」)

<問>

「不破をこのままにしておいて本当にいいんでしょうか?いずれ自らの身を滅ぼす恐れがあります!」

 

第14話でデイブレイクタウン近くのダムに向かう不破を心配した刃唯阿が天津垓に言った台詞です。

では、第4話でデイブレイクタウンに向かう際にパンチングコングプログライズキーを不破諌に渡した際に刃唯阿どのような心境だったのでしょうか?

 

 

 

飛電インテリジェンスの社長室に宇宙飛行士の兄弟が怒鳴り込んできた!

或人がやってしまったある行為が、宇宙で衛星ゼアの管理をしていた宇宙飛行士ヒューマギアの雷電の逆鱗に触れたのだ。

雷電は弟の昴と共に或人を飛電の宇宙開発センターに連れていく。

そこに、なぜかA.I.M.S.と滅亡迅雷.netが次々現れて―――。

www.kamen-rider-official.com 

 

 

…最近、読解力の低下が心配されている15歳以下ではない年齢の私ですが、刃の回を重ねる毎の心の動きが分かりません(笑)

そもそも、今回、刃が天津に訴える道理も分からないんですよね。

直談判したところでどうにかなることなのかと思うと、緊迫したシーンに付け合せた雰囲気もののそれらしいやり取りなだけなのかなと。

 

 

仮面ライダーイカヅチの動きから、刃は天津の命によりプログライズキーを或人と不破に与え、データを蓄積したところで滅亡迅雷.netの手に渡るように仕向けられていたことが察せられますが、そうであれば天津の狙いとはいえ、ゴリラやヘッジホッグのプログライズキーを渡してしまったこと自体が不破自身を破滅へと向かわせる要因だと思うんです。

つまり、不破の身に起こったことは刃が発端であり、そこで不破の心配するなんて、指示とはいえ、刃が引き起こした結果なんですよ。

ガトリングヘッジホッグプログライズキー*1の時は元々、不破に渡す気なかったようですが、かといって刃自身が使うことなくドードーマギアに敗北してましたし、メタ的な映画チケットの特典販促以外に何故持ち歩いていたか分かりません。


「俺は俺の信じる物のために闘っている!お前もそうなんだろ?」


「…ああ」


「だったらそれでいい」

 

「自分を信じている…か…。不破!コレを使え!」

 

ここだけを切り取って見れば、"刃はザイアの立場として守らなければならないというしがらみを捨て、自分の判断で不破に加勢するようになった"という心の変化と取れるのですが、それでも結局、今回は天津に直談判しにいってしまってるんですよね。

このヘッジホッグのやりとり後で、不破の前でもふてぶてしい態度に戻ってしまいますし、今回は指示を仰ぐところに留まっているので結局、心の動きが一進一退で分かりません。

かといって、葛藤する様子も見えませんし。

 

ゴリラプログライズキーを渡した頃に話を戻しますが、不破に関わる真相があるであろうデイブレイクタウンへ向かわせる時に刃は天津に同じように抗議していたのでしょうか。

天津に指示されるがままゴリラプログライズキーを渡したのであれば、ヘッジホッグプログライズキーの時とどのような変化があったのか、描写もなければ、刃が心情を吐露することもなく何を考えていたか逆算しても分からないんです。

 

第4話で初めてバルカンとバルキリーは共闘してみせます。

バルカンは強引にバルキリーの背中を掴み後ろに投げ払うなど連携というには一方的すぎる戦い方を見せるんですね。

しかし、特にその後もフォーメーションらしいものを見せることなく、バルカンの乱暴な立ち回りにバルキリーが合わせる粗削りなその場の戦法のまま、時には逆に単独で戦うバルカンにいきなりカバンショットガンを投げ渡したりを見せられた状態で、第8~9話の病院回での刃の必死な不破を助けてほしいと訴える懇願する描写に移り変わってしまうのです。

ちょっと心の動きが飛びすぎてやしませんか。

何かしらの語られぬバックボーンが刃と不破の間にあるにしても、それを示唆させるやりとりがなくては、要所要所のシーンを切り取って独立し、成立させてるだけの継ぎ接ぎで出来たキャラにしかなりません。

これはキャラクターに用意された余白ではなく、キャラクターに用意されるべき描写の不足でしょう。

 

 

前から思っていることなのですが、気兼ねなく互いが互いの背中を任せられる程度に成熟した関係でないと、この粗暴なやり取りから決死の懇願へは繋がらないんじゃないでしょうか。

相容れない上司と部下関係の中では相手が瀕死になったとて、一生懸命に救ってくれと頭を下げられないと思うんです。

ファイズやキバなどの脚本を手掛けた井上氏的なやり口で例えれば、二人の間に肉体関係があるなどの異性としての交わりがあることでやっと処理きれしそうなぐらい、現状で実は密な関係になっていないとおかしな状態だと思うんです。

ネタで肉体関係などと言っているのではなく、直接描写しないまでも艶のある関係であることさえ大人に分かる程度の示唆ならば容易に説明が付けられるのではないでしょうか。

 

チームとして分かりづらい立ち回りでありながら、不破との恋愛要素が今のところないのは、後半に取っておいているのか、はたまた女性の社会進出をメッセージに入れ込むために使われがちな“色恋でのキャラ消費”を避けているぐらいしか理由が浮かびません。

どちらの理由にせよ、現状で中途半端が過ぎますけど。

 

 

また、「刃の立ち位置を女性から男性に置き換えたところで違和感がないことがポリコレとして成立している証拠なのでは」的な感想も見かけたのですが、もし置き換えたところでも支障がないというのであれば、それはただの単に無難なだけの存在であり、「レギュラーに女性ライダーがいる」という条件を満たすために用意されたお飾りキャラと言えると思います。

とりあえず企業の広報部長や政治家の重要な役割に女性を配置することで女性進出に目を向けているという社会に対するプロパガンダとしての消費が目的だったなんてことはよく聞く話で、本人に大した活躍はさせずに、結局のところ、主導権は男性にあるなんて現実にもフィクションでもあるシチュエーションのように思います。

刃唯阿は物語内でも世の話題性上でも典型的なそれになっているのではないでしょうか。

 

実際、刃は腕力において非力なりにテクニカルに動き回るという男性的でない戦い方ですし、“秘書=女性”という固定概念にとらわれたレギュラー陣のヒューマギアの性別配置なんて、この作品がアップデートされていない、令和らしからぬ ちょっと古い価値観でまとまってますよね。

馬鹿力キャラの女性キャラは戦隊にもいますが、超パワー型のフォームチェンジを女性ライダーがしたって良いはずですし、福添副社長に男性容姿の秘書ヒューマギアがいたっていいじゃないですか。

 

ハグプリでも、女子に助けられることを「僕がお姫様になっちゃった」と皮肉りながらも初の男プリキュアになった男の子キャラがいましたが、男プリキュアが誕生しただけでポリコレに配慮出来てると思うか、男プリキュアが生まれる必然性を話に盛り込めるかは物語に対する読解力があるかないかで受け手の評価も大きく変わると思います。

要は出せばいいのかという話です。

刃という女性ライダーが序盤から出てさていればゼロワンはポリコレしてる…制作も視聴者も作品に対して要求されてる志がその程度であるとしてしまって良いと思ってるんでしょうか?

日本を出てみると、世界の特撮には最強の男の横にいるだけのお飾りなスーパーなウーマンしかいないと思ってるのでしょうか?

 

 

さてさて、話は戻して。

性別を抜きにしても「ザイアのために暗躍する刃」と「不破を気にかける刃」という二面性の切り返しを上手く描写していないせいで、本音と建前のスイッチングが汚いというか、どうしてもシチュエーションとして近いファイズと比較してしまうと裏表のある草加の下手くそな模造品だなという感じがしてしまうんですよね。

巧を陥れる草加と真理が好きな草加は表と裏の顔、それらを上手くメリハリを持って見せているからキャラが活きると思うんです。

ポリコレなんて普段から真剣に考えてない人たちが付け焼刃で社会派意識したところで、いきなり女性ライダーをレギュラーにすることぐらいしか発想がなく、出した女性ライダーというキャラクターを持て余した結果、内面の造形の輪郭のボヤけ、存在意義が強く見出だせないキャラに仕上げてしまっているといっても過言ではないと思います。

 

現状なら、ライダーにならなくともバルカンを支える技術顧問で十分成立する役柄でしょう。

滅亡迅雷.net側も仮面ライダーとしてしまうことで仮面ライダーの定義が危うくなっていないかという特ヲタの危惧を最近、SNSで見かけましたが、言ってしまえば刃も仮面ライダーである必然性は今のところないと思います。

現段階で無理やり持たせるとするならば、「一応は味方側」ぐらいだけ。

ゼロワンは『仮面ライダー』そのものをモチーフにしているようですが、或人は技の1号、不破は力の2号に対して、その2人の力を手に入れたV3的ポジションは刃ではなく、1号ポジの或人の強化フォームになるようですし、真の“3号”としても刃は機能していないですよね。

 

戦うにも髪を結わわず、さらさらと髪をなびかせる程度の女性キャラとしの活かし方しか描く引き出しがないのであれば、仮面ライダーイカヅチも長々と描いた暗殺ちゃんからのバトンも、上手く引き渡せぬままスーツのビジュアルと元ベルデの肩書きで魅せるだけの芸事ぐらいが制作の限界なのかな、と納得していますが。

 

*1:うるせえ名前だな