オマエたちの出番はこれで終わりです(仮面ライダーゼロワン第24話「ワタシたちの番です」感想)
結婚相談ヒューマギア・縁結びマッチがその身をかけてカップル成立に挑んだ模擬結婚式。だが、その会場でマッチは暴走してマギアとなり、さらにレイダーまで現れてしまう。或人は禁断のメタルクラスタホッパーへと変身を遂げ、マギアとレイダーを止めようとするが、やはり制御がきかず暴れだしてしまう。その前に現れたのは、天津垓が変身する仮面ライダーサウザー。サウザーとメタルクラスタが戦闘を繰り広げる中、模擬結婚式の牧師役を演じていた俳優ヒューマギアの松田エンジが、メタルクラスタによるアークの力に囚われてしまい―――。
東映の次回あらすじはいつもネタバレ少めなので、この内容から察するに「次回は中身がほとんどないぞ…」と生唾飲んでいたらその通りでした(笑)
まず、前回の段階でマッチが意図的にマギア化できない理由を述べたので細かいことはご参考に→(前回の被告人は千春の幼馴染にレイダーで殺害された可能性(仮面ライダーゼロワン第23話「キミの知能に恋してる」感想) )
・マギア化の条件なんで知ってる?
・誰かのために悪役を買って出るのは善のシンギュラリティでアークの入る隙なくない?
というわけでマッチが「わざと」と言ったのは矛盾、ゼロワンの設定崩壊というところを触れておきつつ、これから本編について話していきたいと思います。
<第16話と対>
今回のメタルクラスタホッパーの克服は一応、アサルトシャイニングホッパーのシャインシステムの成り立ちと対になるように作られていると思われます。
イズのピンチ⇔或人のピンチ
社員のために⇔社長のために
と言った感じで。
同じく諸田監督にしたのはそういう狙いもあったのでしょう。
しかし、対なら対で、アサルトシャ…(以下略)の時点で感動的な大きな山になれていませんでしたから、小さな山の向かいに同じような小さな山を作ったところで結局は似た感想の「やっつけで感動させようとしてるな」以上を持てるわけありませんよね。
アサ…(以下略)の時は後の会社の幹部会議を控えた上での「飛電社社員のために戦う社長」とするのが狙いでしたし、スマイル回で言っていた利益うんぬん、笑顔うんぬんもどちらかというと人間の社員を指していたので無理やりな解釈変更のようにも思います。
ましてや、善意とはなんぞや悪意とはなんぞやすらやっていない上に、私たちが或人から善意らしい善意を提示してもらえていないので、データがどうこう言われてもメタルクラスタホッパーの克服のくだりがどうにも言葉でのやりとりにしか感じられませんでした。*1
<飛電インテリジェンスは派遣会社>
予告から社員の切り口を変え、ヒューマギアを社員とする見方で話が進むことは分かっていたのですが、いわばヒューマギアを“体が機械の派遣社員”とするならば、第1章の現場回りでは、クレームのあるヒューマギアのために頭を下げつつ、人間を上回るスペックで推すのでなく、AIならではの活躍できるような状況や活かし方を派遣されたヒューマギアやイズと一緒に考えるなど、派遣会社的な立ち位置で立ち回ればもっと感動出来るのにな、と感じました。
(ニギローがその回に近いですが、あれがフォーマットとして定着するのではなく、サブ脚本の介入も手伝ってコビーなど古典的な人間らしいヒューマギアの自我の目覚めに寄っていった印象)
今回をドラゴンボールで例えるなら、“善意の元気玉”展開といったところでしょうが、皆から善意を溜め込めるほど或人への感謝を貯金できていないのが元々の構成だったので、付け焼き刃の感動シーンにしかなりえませんよ。
<お仕事勝負と切り離された暴走>
今回、おそらく、エンジと昴、最強匠親方にオミゴトは役者さんを召集して、他のキャスト*2はてれびくんDVD用に呼んだ面々と撮りためておいたスマイルとビンゴで構成されたのだと思います。
そうなると、第2章始まり、つまりお仕事5番勝負初戦のサクヨは何故撮られていないのでしょうか?
…つまり、この構成、2章の始まりでは決まっていなかったということになります。
年明けのライダーに匹敵する主人公の新フォームですからそれなりに気合いを入れて前もって取り組んでいると思うのですが、克服の展開は途中からの思いつきだったんですね。
それに、わざわざお仕事勝負を中断してまでメタルクラスタホッパーの克服回に時間を割くのも謎です。
垓にお仕事勝負で勝っていく様と暴走の克服からの完全勝利をリンクさせた方が物語的なカタルシスも強く生まれるので、何かと勇み足で展開しようとするゼロワンの作品にはらしからぬ、足踏みした回のように思えました。
数少ない取り柄でしたよね、急展開。
さすがの制作もお仕事勝負に入れ込むのは力不足だったのでしょうか。
そりゃそうですよね、そもそもお仕事勝負に社長同士の殴り合いは関係ないんですから(笑)
サウザー*3を初めてまともに倒せたそれなりの達成感もエンジの身代わりによる逃走とまだお仕事勝負は2戦も残していることでモヤッとしてしまうのは、克服したスッキリ感に雑味になってしまうと思うのですが…。
「君だってメタルクラスタホッパーを制御したところで大事な社員を壊すしか能がないだろう」と煽る台詞があれば、もう少し垓に一泡吹かせた感が出たかもしれませんね。
次回への惹き付けのつもりでも、突然の滅の脱走や謎のままの亡の存在など、不破パートも含めて、他にも問題はまだまだ残っているので、いつものように明るくカメラ目線でギャグをかまされても一時のぬか喜びにどう感情を持っていっていいのか分からないんですよね。
エンジがマギア化したのは人間態をそのまま傷つけるのが放送上ダメで納得しますが、撃破された後は人工皮まで剥けてるはずなのに服さえ着てるのも設定を忘れた演出ですよ。
ヒューマギアの素体スーツはなんのために作ったのですか?っていう
<突然のお話改善と設定崩壊>
これまで足を引っ張ってきたマギア化したら倒すしかない展開でしたが、あからさまなマギア化の克服は はなじらみましたねぇ。
スマイルで一度セキュリティを入れるくだりをやったのであれば、次の匠親方から少しずつ、アークに抗える予兆を見せるべきだったのではないでしょうか。
一万歩譲って、マッチが狙ってマギア化したにしても豆腐メンタルのビンゴからだと高低差がありすぎて逆に違和感ですし。
エンジの演技力*4で騙すくだりも、まず垓が何故アークと繋がったヒューマギアなら信用してしまうのかという時点で垓のキャラ崩壊にも思えますし、刃は空気どころか留守だしで、やりたい展開のためにせっかくやってきた設定を崩したように感じました。
どうせならスマイルの回を今回の若手脚本家に書かせて、ビンゴ→マッチとメイン脚本に書かせた方がまだ話として繋がりを感じられたように思います。
スマイル回なんてメタクラの登場もなければ、サウザーの初登場回でもない、特に大きな動きのない回でしたからね。
そして次回はなんと!
ビルドでお世話になった上河内監督とメイン脚本の強力タッグ()ですよ。
大森プロデューサーが絶大な信頼を寄せる二人で挑む第25話、お仕事勝負はまだまだ見送りなのを考えると、第2章で迷走しながらもここでなんとか巻き返そうともがいているのでしょうかね?