ルナ太郎の腹筋崩壊ブログ

私は…仮面ライダーゼロワンの気になった所を大人げなく殴り書くのが仕事だから!

この男、不誠実で仮面ライダー!(仮面ライダーゼロワン第29話「オレたちの夢を諦めない」感想)

 

 

ヒューマギア自治都市の住民投票を巡る“お仕事5番勝負”最終決戦は、「ヒューマギア賛成」を主張していたラッパーヒューマギア・MCチェケラの暴走によって一気に飛電インテリジェンス不利に傾いていく。

そんな中、チェケラ暴走の騒ぎを収束させるため現場に駆け付けたバルカン。

そんな彼に対して、天津垓が不穏な言葉を口にする。

「ザイアの道具となり、ゼロワンを倒すんだ」垓の命令などきくはずのないバルカンが、不意にその銃口をゼロワンに向けて―――。

www.kamen-rider-official.com

 

 

 <シンギュラリティウォー?>

 

 大事な局面で敗北してしまう展開は最近だと、アベンジャーズシリーズ第3弾である『インフィニティウォー』が思い出されました。

(以下、『アベンジャーズ インフィニティウォー』のネタバレ在り)

 

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とてつもなく危うい力を手に入れようとする敵サノスにその力を手に入れさせまいとヒーローが結集し奮闘するのですが、大事な局面では負け続けるも、覚醒した既存のキャラや仲違いしたキャラも帰還し、なんとか最後は勝てるんじゃないかと希望を持てた大一番で負けてしまい、敵に力を与えてしまうという非常にショッキングな内容でした。

このサノスという敵は強大な力を手に入れ、自身の歩んだ教訓からこの世の全ての争いをなくすべく、全ての生命の半分を消滅させました。

これは実際に起きている増えすぎる人口という地球が抱える問題に対するメタファーであり、それに対して垓の考える「自我を持つAIは危険」というリアルには置き換えられない架空問題と内容の厚みが違います。

どこまで意識しているか分かりませんが、似たような大敗を喫する展開としての成功例に対して、ゼロワンのお仕事5番勝負は上手くいかなかったどころか盛り上がりとしてはアマチュアレベルだと感じてしまいました。

 

 

<ヒーローが負ける姿を子供に見せて良いのか>

 

日曜の朝に、第一に子供に向けるべきである企画“仮面ライダー”に対してアベンジャーズシリーズはMCUというマーベルコミックの長い実写映画の企画であり、対象は大人も優先的に含まれていると思います。

持論ですが、子供に向いている作品で主人公であるところのヒーローが目の前の何かを守れないという描写はあってならないと思っています。

つまり、MCU仮面ライダーで向けられたターゲット層が違うので同じようなことをしてはいけないと考えているんですよね。

子供がヒーローを愛するのは格好良さや強さも勿論あると思うのですが、それだけでなく、日常でも精神的な支えになりうる象徴のような存在であるから、という理由もあるのではないでしょうか。

 

 

これは以前、私がツイートした内容ですが、23話の段階でこれほどまでに守りきれていない描写が存在したのです。

人やヒューマギア以外で付け足すなら、スマイルの物件に至っては一度だって守れたことはありません。


クジラのやつのせいだよ。こっちが売ろうとしている家をアイツが片っ端から壊すから!

 

そんな弱音を吐かせていいのでしょうか。

 

お仕事勝負以前の問題ですが、ゼロワンのように目の前で怪人になってしまうかもしれないヒューマギアを救えないという展開を連続して見せてしまうのは、子供自身にとって何かのピンチの時にゼロワンを頼りがたい存在にしてしまうと思うのです。

結果的に怪人を倒すんだから良いんじゃないか、という話になると思うのですが、良いキャラとして描いていたヒューマギアを番組の終わり際に怪人化させてしまう必要性は逆になんなんでしょう?

すでに怪人になっている敵を倒すだけではダメなのでしょうか?

もし、『仮面ライダーウィザード』で主人公の晴人が刺客としてのファントムを倒すだけでなく、ゲストキャラの絶望を許し、ファントム化した後に倒すという過酷な展開にしてしまうのは晴人に向く子供達からの信用問題に関わりますよね。

「ヒューマギアは人じゃないんだから人間扱いする必要はない」という反論が上がりそうですが、都合の良い時…近い回ではコンクリを持ち上げて機能停止した119之助に人間のような扱いを或人にさせて涙を誘うような作品なんですよ、ゼロワンは。

 

マギア化とは関係ないですが、今回のイズもそうですよね。

イズだけは壊してならない存在として他のヒューマギアと違い、絶対的に壊されないように守られています。

(その守った相手が不誠実な或人ではなくパワーアップした不破というもの、より或人の欠如したヒロイックさに拍車をかけます)

こうやって、時にぞんざいに、時に尊くヒューマギアを扱う『仮面ライダーゼロワン』の作風はあまりにも不誠実ですし、唯一といって良いほどヒューマギアを信頼しているはずの或人が自社製品のマギア化を許し続け、とうとうお仕事5番勝負で勝ちに導けないという展開はニチアサにあってはならない展開と思っています。

アベンジャーズや少年漫画でたまに見る展開のように大事な局面で負けてしまうことで意表を突きたいのかもしれませんが、それを朝9時の幼い子供も見る番組でやるというのはコンテンツを舐め切っていると思うんですよ。

 

 

<お仕事5番勝負そのものが悪かったのか?>

 

そのように勝敗結果で意外性を取ることはせず、本来はお仕事5番勝負の内容、ZAIAとの攻防具合で緊張感を持たせることが重要だったと思います。

 

「お仕事5番勝負はどうせ飛電が勝つと分かってしまうから緊張感がない。だから面白くない」

 

という批判を以前見かけたことがあります。

しかし、面白くないところは激しく同意なのですが、これは様々な作品を見て知識を持ちすぎた勝手な大人の言い分ですよね。

おそらく、ここに対する奇のてらう方法として制作は敗北という選択肢を取ったのかもしれませんが、それは前途の通り、幼児も見るコンテンツではやってはイケない禁じ手だと私は思うのです。

仮にさっきの批判の声を上げた特ヲタを勝敗の結果で予想を外させて驚かせることが出来たとしても、2クール目に感じた間延びは決して清算されることはありません。

まず第一に、長い章の〆方ではなく各エピソードでハラハラドキドキさせるのが作品を手掛ける側の本来の仕事じゃないですか。

経過ではなく結果だけで話題を作ろうとするということは、ある意味で手抜き行為だと思うんですよね。

『インフィニティウォー』も一歩引いて見れば、前後編の前編だという前情報や、完全に揃えきっていないヒーローたち、尺の使い方、宣伝の事前アナウンス等々で敗北は察せられてしまうんですが、そこは演出や息もつかせぬ展開で作品に対する没入感を与えてくれたことで楽しませてくれていたのです。

決して、あの作品はヒーローものとして結果の意外性だけで評価されたわけではないと思います

見えている結果でも手に汗握らせてくれる、そんな成功例を知っているだけに「結果が分かっているから楽しめない」という考えにはやはり異を唱えたいですね。

だって、私たちは結果的に、悪に打ち勝つと分かっているシリーズを何年も何十年も飽きずにこうやって見続けてきたのではありませんか。

ゼロワンは子供向けとして不誠実ですが、物語の盛り上げ方との向き合う姿勢も不誠実すぎます

 

 

<すがるビルドの成功と昔読んだ少年漫画誌>

 

今回の5番勝負、ビルドであった北都とのタイマンバトル、西都との3番勝負の流れで生み出されたのではないかと私は睨んでいます。

90年代少年誌のバトル漫画にあったこの手の疑似チーム戦はその手のノリが好きな特ヲタやライダーとして真新しい展開にウケていた印象があります*1し、そこの手応えに味をしめた、というか。

ただ、見誤ったのはこの構図なら必ず盛り上がるだろうとしてしまったことで、テンポ感をとにかく大事にしたビルドに対して、5番勝負に3ヶ月もかけてしまったのも大きな間違いでしょう。

 

もう問題だらけ(笑)

 

以前から「ゼロワンは少年漫画のオマージュが見受けられる」と評させていましたが、それらのバトル漫画もチーム戦は確かに何十週にもかけて描くことはありましたし、その成功例を踏まえてこの長尺で挑んだと考えれば納得がいきます。

しかし、元々、大森プロデューサーが手掛けた『仮面ライダードライブ』序盤の2話1エピは間延びの印象が強く、おそらく当人たちも連続して2話1エピをやるためのスタミナ配分が今日まで分かっていないままだったと2クール目を見て思いますよね。

2話も使っていながら勝たせる気もないので自治都市の概要も有意性も見えてきませんし、残り1話でお仕事勝負すべきヒューマギアはフリップ持ちのイズ以外におらず、或人だけが演説するのもフツーなら考えられません、めちゃくちゃです。

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新屋敷「だったら教えてやるよ、ヒューマギアにうってつけの仕事をなぁ!お似合いだよ。24時間突っ立ってても文句一つ言わないんだから!」


そのまま、前回の記事でも述べました 当人は渾身のメッセージだと思っているであろう「人間の悪意にAIは影響される」を意図して職業紹介も絡めて見せ続けたのですから、間延びに無意味なメッセージ性とつまらなさは倍増。

さらに言えば、バトル漫画のチーム戦では大体が試合前に戦う味方側のキャラの掘り下げは終わっているので、あとは試合中に対戦相手を説明するだけなのに対し、ゼロワンは試合が決まってから双方を一から説明しなければならず、見る側が感情移入しにくいというのもあるという誤算に続く誤算で構成されていたのです。

 

これらを踏まえて。

例えば、2週ぐらいでお仕事5番勝負の全試合を描く、そこで戦うキャラは第1章に現れたニギローやジーペンなど知っているヒューマギアたち…という形であれば盛り上がれたのではないでしょうか。

番組終わりにYouTubeで腹筋崩壊太郎のスピンオフがありましたが、5番勝負内にお笑い芸人対決も設け、腹筋崩壊太郎に職を奪われた或人とコンビを結成してZAIAに笑いで勝つなんて展開の方が ただやられ役だった腹筋崩壊太郎周りの救済になると思います。

5番勝負中に過去のヒューマギアは出てきましたが、それはメタルクラスタホッパーの暴走克服のための盛り上げる存在として5番勝負外で使ってしまったのも、5番勝負を引き立てる構成として下手と言わざるを得ません。

 

東映特撮がアベンジャーズを意識しているような発言はジオウリュウソウ夏映画で田崎監督と上堀内監督のインタビューがありましたが、もしゼロワンチームもアベンジャーズを意識しているのだとすれば、作品の分析と仮面ライダーとの違いの理解が足りていませんし、同じように影響されたであろう少年漫画の良さも解釈しきれていないのも問題でした。

(東映特撮のトップにいる白倉Pもアベンジャーズに対する言及ツイートはありましたが、「あちらはあちらの良さ、こちらはこちらの良さを」という見解だったような)

お仕事5番勝負、アイデアそのものは良いと思いますし、試合結果を社運と絡めること自体は間違いでないと思います。

しかし、最終結果の意外性頼り、思い入れのないキャラ同士の接戦、尺の使いすぎ、この3本柱がこのパートを最悪なものにしましたし、「だからゼロワンはダメなんだ」という確固たる証拠として自ら提示してくれたように思います。

大人の目線で予定調和だと見れば、遅かれ早かれ飛電社社長の座に或人が戻ってきそうではありますが、飛電社が負けた悲壮感はプロが作るものとして心を動かす域に達していませんでしたし、飛電奪還への期待感が薄いんじゃ、ズブの素人ブログに「アマチュアレベルだ」と言われるんですよ。

挙句、刃は自分の意志で動いているのかが5番勝負行方と対等な問題になっていませんでしたか?

 

 

<もうお前は要らないぜMCチェケラ>

 

さてさて、前回の記事で終わりに書いた「MCチェケラは今週どう扱われるか」の答え合わせをしましょう。

 

…予想通り、都合が悪いので退場したままでしたね。

前回からの疑問だったのですが、赤く光ることなくゼツメライザーを取り出し人間に対して暴力行為を行えるのは暗殺ちゃんぐらいでしたよね。

MCチェケラも同様に滅亡迅雷.netや垓の思惑として密かに改造されていたのではないかと予想していたのですが、そんなこともありませんでした(笑)

となると垓はイチかバチか勝てそうになった時に刃にレイダーの宣伝をさせようとしていたということになってしまうんですよね(笑)

最低限、ゼツメライザーを相手に与えて、刃をマギア化に対抗する兵器として見せる、そこまでが垓の計算だという描写を見せなければ勝敗も含めて見る側に不親切ですよ。

 

さらにラッパーヒューマギアを使おうと言い出したイズへの責任追求もなく、雰囲気でなんとなく或人に落ち度はあることにしたいという流れが気持ち悪かったですね。

MCチェケラがAI特別法の違反である暴力に走った策略的経緯もないので、“ただ掻き回すだけの存在”に「オリジナルソングも歌わせときゃゃ盛り上がるだろ」とされた彼は非常に薄っぺらいキャラクターで終わってしまいました。

本編でなんの説明も追求もないまま本当に終わらせる気なんですかね、それでは雑に散っていった腹筋崩壊太郎の二の舞じゃないですか。

これもまた、ゼロワンの不誠実さと言ったところ、なんでしょうか。

 

 

<前回記事の不破ファイズオマージュ捕捉>

 

フォロワーさんに大森プロデューサーがファイズをしっかり視聴していたという発言があったインタビューを教えていただきました。

 

入社した時にやっていたのが『仮面ライダー555』(2003年)で、「仮面ライダーってまだやってるんだ」というのと同時に、『555』を見て「仮面ライダーってこんなおもしろいことをやっているんだ」と驚きました。

news.mynavi.jp

 

見ていたとて、ファイズのイズムを理解しているかは謎ですけどね(笑)

何かしら夢を持てと殴りかかってくる たっくんを私は知りませんし。

 

 

<終わりに>

 

そういえば、汚職の湯藤議員はそのままのさばったままでしたね。

いつか報いを受けるとしても先週今週の連なりで見れば、子供向けコンテンツとして最悪です。

いや、もう害悪レベルかな?

前回記事で、大森プロデューサーにとって第一章は“助走”、今期の第二章は“ジャンプ”のつもりなんだと評させていただきましたが、悪意を保留にして「夢や情熱が必要」というメッセージを示すべく、もうひとっ跳びするようです。

であれば、悪意とセットで示さないと胸糞悪いだけだと思うのですが、今後はちゃんと湯藤が裁かれるかどうかに着目して見守っていきたいと思います(そこ?)

 

最終回まで制作はどうか湯藤のことを

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なんて言わずにしっかり落とし前つけて下さいね。

*2

 

 

*1:あんなもん“戦争”と呼べないので俺は嫌いだよ

*2:個人的にはドードマギア化したチェケラの2刀流で首スパーンでOK