暴走に巻き込まれる悲しきレタス(仮面ライダーゼロワン第35話「ヒューマギアはドンナ夢を見るか」感想)
※畑山の息子が踏みつけた野菜たちは後でスタッフが美味しいポトフにしました(きっと)
滅亡迅雷.netの雷(イカヅチ)のデータを或人から奪ったのは、“或人に夢を掛ける”と一度は信頼を示した迅だった。
迅は唯阿の協力得て、亡(ナキ)の復元にも成功していた。あとは雷を蘇らせることができれば、滅亡迅雷.netの完全復活が実現する。
雷のデータを渡すわけにはいかないゼロワンは、迅に猛攻を仕掛ける。
だが、身を挺して迅を守ったのは―――滅だった。
<親として乳が張ってきた滅>
「守る?守る必要がないくらいお前は強い」
「それに俺とお前の関係は、普通の親子とは違う」*1
「息子よ。親離れが早すぎるぞ」
「お前は俺に作られたヒューマギアだろ。だから子供と呼んだんだ」
これらは第6話で滅が発したセリフです。
前回で自身が父親型ヒューマギアであったことを知り、今回で迅を庇った滅とは思えない発言ですよね。
わざとらしいほどに父親を意識したセリフのオンパレードですよ。
(そもそもあの時から迅との問答がイマイチ噛み合ってなかったので、掘り返すのも可哀想ですが)
第34話では「息子…?なるほど、親子というやつか」と息子を庇う畑山父の姿を目の当たりにして発言したり、或人に「お前が迅を育てようとしていたのは、お前が父親になろうとしてたからじゃないのか!」と詰め寄られるぐらいしか、父親としての自覚が強く生まれるキッカケになりそうなやり取りがありませんでした。
しかし、この程度では本格的に父親らしく振る舞い始めるエピソードとして弱いと思いませんか。
第6話では迅が迎えそうだった善良なシンギュラリティをリセットさせたのはフォースライザーだったので、未だにフォースライザーの使い手である滅が親らしい善良なシンギュラリティで覚醒するには相当強いエピソードが必要だと思います。
第一、アークの介在とはいえ、迅を庇うのは第16話で既にやっていますよね。
なんならあの頃よりも迅は自立し、子としてのバブみが薄れているので、自分の意思で迅を助けた行為の意外性がないのです。
そもそも、元々は父親ヒューマギアであった滅の個体がアークに選定されたのは迅に限らず、暗殺ちゃん*2など、マギアを育て管理するためのものと考えるのが妥当で、或人にそこを突破口として説得されるのはおかしいように思います。
現に滅は序盤から父親らしいポジションで動いていたのですから。
そもそも「お前の役割思い出せ」と人間の都合良い理由で落とそうとするなら、滅が父親ヒューマギア時代に育てた子を連れてくるとか、実は畑山家の息子を育てた時期があったとかそういう無慈悲な滅に対して情に訴えやすいシチュエーションを持ってこいって話なんですよ。
AIらしく指示を受けながらとはいえ、彼なりの父性がとっくに漏れ出ていた滅ですから、ここに来ての親らしい自我というと父ではなく、ワンオペ育児として足りなかった母性も芽生え、乳が張ってくるぐらいが妥当な気さえしてきます。
父親の役割を担わされたAIが子供に設定された対象を庇うプログラムなのは当たり前。
今回で追加された揺らぎが冷徹さを売りにしていた滅の魅力を半減させるように思うのですが、これからどうなっていくのでしょう。
<プレイバック駄インタビュー>
滅亡迅雷の4体がついに揃いましたね。
大森プロデューサーとメインで脚本を担当している高橋氏は過去にインタビューでこんなことを答えています。
高橋
仮面ライダーゼロワン シャイニングアサルトホッパーも出るので、ヒーロー側が2回パワーアップするんだったら、敵もふたり倒す必要があるな……ということで「だったら滅も倒しちゃいます?」みたいなことを最初に言ったんです。
だけど、いざ蓋を開けてみたら、「あれ? 雷含めて3人倒しているぞ」と(笑)。
大森
みんな倒しちゃった(笑)。
でも、雷が1週で終わりというのは、やっぱりもったいなかったかな……。
高橋
僕個人としては、いつか滅亡迅雷.netで横並びをという野望はあります。
———滅は倒す想定ではなかったということは、第16話で滅亡迅雷.netと決着をつけるというのも、想定外だったのでしょうか。
大森
いや、それは予定通りですけど、17話以降をつくり始めてみると、ちょっと早かったかなと(笑)。
・亡と雷は当初の予定通り。
・滅は勢い余って倒してしまった。
・滅/亡/迅/雷の4体が揃うかは元々予定していなかった。
――その後、お笑い芸人型ヒューマギアは現れていないようですが、そのうち腹筋崩壊太郎の再登場はあるでしょうか?
大森
いや、そう簡単には出てこないですよ。
高橋
人気があるからといって、そういうところは安易にやりませんよね。
大森
とはいえ、チャンスがあれば出してもいいですけどね。どこでカードを切るかが難しいです(笑)。
・ビンゴ回でのアリバイ証拠の出演は“安易”ではない。
・Youtubeのスピンオフは良いチャンスだった。
これらを総合すると、
滅亡迅雷.netの幹部が35話で揃い踏みするのは高橋氏の野望としてあって、当初から予定したものではなく、ここで亡と雷が復活するのは腹筋崩壊太郎と同じく安易に復活させたつもりはない。
ということになりますよね。
まず、安易に復活させましたよねっていう話です。
亡が結局、復活して人間の脅威となることが第32話で不破の頭の中でヒューマギアの夢を叶えることを託したエピソードをチープにさせますし、第3章からの転生システムって実際は雷を復活させるための口実なんじゃないかってぐらい、ヒューマギア全体の尊さをひっくり返してしまう設定じゃないですか。
バックアップ使えば、蘇ります!…って敵幹部にも適応するようでは安易ですよね?
希少価値がミドリ=雷なのですから。
滅亡迅雷.netの幹部4体を揃えたいと思うのはスーパー戦隊が混在するニチアサにおいて、当然の思考だと思いますよ。
むしろ、「4つのピースは揃えるもの」というパズル的な価値なのです。
視聴者もそのつもりで見ていたのに亡の全容が分かる前に全滅してしまっては望む声が挙がって当然でしょう。
ですが、だったら4体の幹部が存在する企画の段階でそれに向かってシナリオ考えません?
「勢い余って全滅させちゃいました!考えてみたら揃えたいよね、テヘペロ!!」じゃないんですよ。
そして、高橋氏の野望、筧氏が叶えてね?って話。
36話以降に高橋氏が戻るかもしれませんが、4体を揃えてしまったのは筧氏です。
デルモの夢をイズがランウェイ歩いて叶えちゃったアレはメイン脚本の悲願をサブ脚本が達成してしまうというメタファーだったんでしょうか?
高橋氏ではなく、何故、結構なクライマックスパートを筧氏に委ねるような采配したのかという疑問がありますが、夏映画の執筆に尽力を注いでもらうためだとするなら、「滅亡迅雷揃えるの、夏映画でも良くね?」と言いたくなります。
「今ここで滅亡迅雷を揃えなければならない!」という必然性が感じられたのは、第16話での決戦時だったように思います。
アークの意志のまま動いて揃えたのかしれませんが、先を見越しての効率的な行動ならば、ゼロワンが滅に敵わなかった最序盤に或人を潰せばよかったよねって話になると思うんですけど…。
…って、え?
筧氏がロン毛イズもやっちゃうの?
仮面ライダー公式ポータルサイト 仮面ライダーWEB | 東映
(宇宙船のインタビューにてオープニングの謎の長髪イズを本編に出す すり合わせるをしている旨を高橋氏が示唆していた)
<何もなかった不破>
記憶が改竄されていたことを知り、持っていた復讐キャラが消滅、空っぽになってしまった不破ですが、そもそも大した人生ではなかったことが明かされましたね。
何かとてつもない陰謀に巻き込まれた半生じゃないかと見せかけたスカしになったわけですが、いよいよ、元AIMSコンビのバックボーンは本当の無となり、彼らは男受けファッションの刃と唯一或人のギャグに笑う要員にまで成り下がってしまいました。
不破に平凡な生い立ちを歩んできたことにしたのは、恐らく滅亡迅雷との共闘をシームレスにするためと思われます。
もちろんこれからまだ衝突もあるでしょうが、復讐や悲惨な過去などの枷がなくなれば、オープニングの5人が横並びになる日も遠くありません。
そういうオープニング再現が好きな制作チームですからね。
…というか、平凡なら平凡な人生で実親のこととか気になりません???