ルナ太郎の腹筋崩壊ブログ

私は…仮面ライダーゼロワンの気になった所を大人げなく殴り書くのが仕事だから!

肩出しコーデが刃の活きる道なの?(仮面ライダーゼロワン第34話「コレが滅の生きる道」感想)

或人は野菜工場を訪れていた。

ヒューマギアの稼働が停止されたことで、すべての野菜をAI制御して育てていた野菜工場は混乱に陥っていた。

その情報を聞いた或人が農業管理ヒューマギアのミドリを復元して工場に届けたのだ。

ミドリが戻ってくれたことに大喜びの工場長だったが、そんな野菜工場をなぜか滅が襲撃して―――。

www.kamen-rider-official.com

 

 

<肩出しコーデは男性のウケがいい>

もちろん、「女性が肩を出す服装を着る=男性のため」と断言するわけではありません。

ですが、一般的に女性誌などでデート服として紹介されやすいコーディネートとして肩出しはよく取り上げられることがあるのです。

 

 

作品内の刃唯阿自身の思惑はともかく、制作的には刃の立場の変化を服装で表そうとしたということですが、今までのスーツ姿に対し、衣装部の刃に新衣装に対する熱量が強すぎたこととギャップ萌えを意識しすぎた結果、キャラクターの持つ本来のキャラクターの色が損なわれたように感じました。

 

唯阿のように、こんなに笑わなくて、こんなに男口調で男性に強く接する役は初めてでした。

「~~するな」「~~しろ」「~~だぞ」のような強い調子の言葉は、今まで言ったことがないもの

news.mynavi.jp

 

いつぞやの女優さんが語る刃に対する印象についてもそうですし、メイン監督も「リケ女で、理論的にものごとを考えている人物」としていたようで、なおさら変におめかしする必要でない場面…今回で言えば、不破の連行や滅亡迅雷.netのアジトで亡を抜き出す作業などで肩を出す必要はどこにあるのかと、刃という薄っぺらいキャラクター像が余計に男性視聴者を喜ばす道具になってしまったように感じました。

まだ、か弱そうな女性ばかりを襲うマギアを捕まえるための囮作戦などで気合いを入れる、そういう展開なら分かりますよ?

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同じメイン監督のサバサバ系女子でもこの違い

現に、農業ヒューマギアがどうこうより、ネット上の反応は刃の肩出しニットの感想の方が強かったような気がしましたし。

「元々セックスアピール強めの刃が本当の姿なのでは?」という解釈も見たのですが、今までそういう風に見えてました?

(男特有の性的に見ていたから起きる「この女はエロい」という都合良い解釈では?…と思って、それはそれで恐くなってしまうのですが。。。)

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せめて「不破が意中の人」ぐらい理由はあれば

元々は女性ライダーが初レギュラーというところからの性差を感じさせるのは長い髪だけ*1、というキャラ造形でしたが、結局、女性的なセクシャリズムを出してしまうなら、無意味な方向性だったように思います。

ギャップ萌えとして刃が活きて一部で拍手喝采かもしれませんが、これを狙って刃の人物像を作り上げたわけでないでしょう。

今年はTGC、去年はOggiコラボと女性ファッションの分野にも力を入れ、その方面の女性にも向けた特撮作りをしたいのかもしれません。

しかし、その手の肩出しが好きな男子を喜ばせたり、そうやって新規の女性層を取り込みたいのであれば、最初っからスーツのパンツルックを貫き通す必要はありませんでしたよね(その手のフェチには好かれそうだけど)。

若くしてAIMSの技術顧問として出向されるほどの彼女は常人の歩む人生ではなかったはずです。

記号として若きエリートとして女性ライダーのキャラ付けをされた刃唯阿に与えるべきは肩出しコーデなのでしょうか。

 

 

<眼帯秘書と感染ゲーム会社社長とゴッサムシティの悪党>

いきなり話がズレるかもしれませんが、今、テレビ朝日で放送されている『M 愛すべき人がいて』(以下、『M』)というドラマをご存じでしょうか。

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浜崎あゆみの半生を元にした小説を実写化したドラマの脚色具合が振り切れて話題沸騰中なんですよ。

歌手を目指す“アユ”に向けられた昼ドラのような嫌がらせや言い回し、ドロドロとした三角関係など突っ込みどころ満載のキワモノドラマとして一部の特撮界隈で話題に挙がるほど。

中でも、アユを担当するプロデューサー“マサ”に就く秘書、田中みな実が演じる“姫野礼香”の怪演が話題の中心にあります。

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ビーザワン主題歌不倫P風ファンガイヤの王



マサは実在するプロデューサーでモデルとなった人物がいるんですが、姫野礼香は原作を読んでいなくともおそらく彼女は存在すらしないと断言できてしまうぐらいにぶっ飛んでいます。

お仕事5番勝負で空気と化していた刃に「眼帯付ければよかったのか?」と皮肉りたくなるぐらい、主線にいないのに存在感がけたたましいのです。

 

そして、彼女がこのドラマのある意味での大きな問題点になっていると思うのです。

その問題というのはこのキャラクターの濃さがアユの歌手としての苦難や恋をどうでもいいことにしてしまっているというところ。

癖のある風貌、秘書とは思えない眼光鋭い目付き、プロデューサーとアユの関係に異常な嫉妬を燃やす姿など非常にキャラは十二分に立っているのですが、ストーリーとしての必然性も、重要人物として関わることがないと断言できるほどに逸脱したネタ要員になっています。

このせいで、本来、大筋のアユのデビューや大物歌手への道筋よりも田中みな実の演技がドラマとしての見所になってしまっているのです。

 

それもそのはず、原作の小説に大きなアレンジを加えているであろう脚本を担当するのは鈴木おさむ氏。

数々の芸能人のバラエティー番組の頭脳としてヒット作を生み出した仕掛人です。

物語の深みではなく、ツッコミ待ちかのような印象に残るキャラクターで見せることが得意分野のメインライターであれば、納得の話題の上がり方なのです。

 

…と、なぜテレ朝系とはいえ、ニチアサと色物深夜ドラマを比較するのかということになるんですが、それはこの田中みな実が扮する秘書の怪演がニチアサ視聴者好みの振り切った演技に感じたことに起因します。

 

例えるなら、彼女は『仮面ライダーエグゼイド』に登場する檀黎斗(中盤以降)といったところでしょうか。

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“M”への歪んだ執着があるのは たまたま

 

ちなみに私、この檀黎斗という男を好きではありません。

過剰な演技に、中盤からのまどろっこしい喋り方へのキャラ変、不必要なまでの変顔まがいの表情の演技など、本編に対して振り切りすぎているとも取れるこのキャラクター性が話題となり、『仮面ライダーエグゼイド』の代名詞にまでのし上がったというのは理解しています。

そして、先ほどからお話ししている田中みな実演じる秘書 姫野礼香は上辺のインパクトだけなら序盤から匹敵するものを持っていると思います。

しかし、私は彼女なら受け入れられてしまうのです。

受け入れられるというよりも、彼女を見たくてドラマ『M』を見ています。

 

そうなってくると、私の中での黎斗と礼香の違いは何かという話になってきますよね。

一緒じゃないかと、どこが違うんだと。

 

…いや、ネタに特化しているのは一緒なんです。

しかし、私の簡単な捉え方の違いから来るもので

 

浜崎あゆみの半生の再現なんぞにハナから何も求めていないからということなんです(笑)

 

ただそのドラマから醸し出す危険な匂いに引き寄せられるがまま拝見し、その危険な匂いに見合った田中みな実演じるキャラクターがいたから、なんですね。

結果、今は田中みな実の奇々怪々っぷり見たさに放送を楽しみにしていると言っても過言ではありません。

『M』第3話で眼帯をした片眼を「プロデューサーのマサのために潰された」と自らの口で語っていましたが、恐らく大した理由でもないでしょう。

そんな彼女の掘り下げなんか期待していないのです。

表層だけを見て楽しんでおります。

 

つまり、私が檀黎斗を好きになれない理由というは、『仮面ライダー』シリーズを歴史あるものとして、そこら辺のキャラで成立させてるような色物ドラマ以上のものを求めてしまい、あの異常なまでの彼の演技が逆算される程度にはまともなバックボーンが本編でしっかり語られることを期待してしまっていたからなのです。

その願いが叶うことはなく、半ば変顔要員として退場するも復活しては長らく味方陣営としてレギュラーに居座ったこともいけすかないです。

亡くした母への愛とあの変顔は直結しないじゃないですか?

彼の生い立ちや思想について、小説やVシネで語られることは知っています。

目も通しました。

しかし、潤沢に4クールも尺を設けられていながら、「少年期に送られてきた永夢の企画書に嫉妬したことで歪んだ」程度をTV本編で説明するだけでは、キャラのインパクトと釣り合ってないんですよね。

 

日曜朝の特撮番組とR指定のあるアカデミー賞を受賞した作品を比較するのは酷な話ですが、昨年から話題になっていた『ジョーカー』のアーサー・フレックの凶人っぷり、ホアキン・フェニックスの名怪演と呼ぶに相応しい立ち振舞いはキャラクターの正しいディティールと非常にバランスが取れてるように思うのです。

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ジョーカーは元々コミックで1話だけの登場予定でしたが、そこから人気を呼び、様々なメディアにヴィラン代表として登場。

ジョーカーが主役の単体映画さえ生まれるほどフィーチャーされてしまうという道筋は檀黎斗と遠からず…と言ったところですが、永夢がバグスターウィルスに感染させるという真相は前々から用意されたものだと思うと、黎斗が『エグゼイド』のジョーカーになれたのはシナリオやキャラの作り込みの妙ではなく、過剰な演技と後半の残基99を削りながら戦う唯一無二の戦闘スタイル、そのピエロっぷりがメインにあったと思います。

小説やVシネで描かれた彼の補完はあくまで人気の上に乗っかった後付けの掘り下げに過ぎないと感じるのです。

 

 

<ゼロワンに求められるネタ要素>

脱線が過ぎましたでしょうか*2

しかし、この檀黎斗のキャラ立ちの成功は以降の仮面ライダーシリーズに、ゼロワンにさえ届くほどの大きな爪痕を残していると思うのです。

 

ゼロワン第8話の感想で、「天使のまひろちゃんにもっと表情付けて黎斗みたいなインパクトがほしかった」というものを目にしました。

滅亡迅雷.netに接続した看護師ヒューマギアの天使のまひろちゃんが序盤の笑顔とは対照的に下品に高笑いをする過剰なホラー風演出でしたが、それではまだ足りないというのです。

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むしろマギア化した中で今までにない爆笑っぷりで統一性ないと思ったぐらい

 

今まで特に檀黎斗の人気を分析することはなかったのですが、『M』を田中みな実の怪演目的で毎週見るようになり、彼が支持される理由が分かったような気がするのです。

もし『M』が終わり、別のエイベックスの所属アーティストの半生を追うドラマがシリーズ化したら、恐らく、私は田中みな実の再演を期待してしまうと思います。

そこで田中みな実が登場することはなくとも、きっと新しいポスト田中みな実を欲してしまうでしょう。

 

「アイツを見て、一笑いしたい」

 

そんな期待が支持者の間で『エグゼイド』放送中にかけられていたのでないのでしょうか。

それが黎斗に起きた現象なんだと肌で感じて分かったのです。

 

良くも悪くも、そうして『エグゼイド』のジョーカーこと檀黎斗のポジションは『ビルド』以降も求められ続け、幻徳の世間知らずキャラにダサTシャツ、内海のやられ役からのサイボーグ化に杖へし折りキャラなど、石ノ森サイドのアイデアも盛り込みつつ、なんとかキャラクターのネタ要素で疑似黎斗を造りだそうと模索していたように思います。

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また、他シリーズとクロスオーバーする『ジオウ』では、彼の再登場を登場シリーズではないオーズ編から出してしまうという異例の事態を起きました。

脚本家や監督のみならずスポンサーから要望を受けるほどの影響力があったようですね。(演じた俳優さんのイベントでの裏話より)

ぶっ飛び具合が作る側にも魅力的な彼だったわけですが、「関連グッズならなんでも売れる」ぐらいの商売的な確約もバンダイにあったのかもしれません。

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今回、エグゼイド同様に大森P×高橋脚本では、黎斗のポジションに天津垓を見据え、Blu-rayの特典映像では彼の暗躍を掘り下げ、何度もレギュラーキャラに煮え湯を飲ませては仕返しを食らわせる新たな“ジョーカー”造りに励んでいるように感じます。

 

あくまで天津垓をネタキャラとしても成立する中盤の代表ヴィランに仕立て上げようするのは制作のおおまかな算段であって、ネットの反応を見ながら別のキャラでの偶発的なネタ化にもアンテナを張っているとも思えます。

一匹狼のはずの不破がゴリラキャラになったり、序盤からイズのシンギュラリティをとうに迎えた人間らしい表情したりなどは視聴者の盛り上がりに対するレスポンスあっての演出・脚本でしょう。

そうやってキャラ立ちする瞬間を見逃さずネタを造ろうと虎視眈々と狙ってるように感じるのです。

 

では、もしここで刃唯阿の色気あるファッションが話題となり、制作のネタアンテナに引っ掛かればこれからどうなっていくのでしょうか。

 

ゼロワンの制作スケジュールが今どうなっているかは分かりませんが、ドラマの撮影はどこもコロナ禍の影響で中断されていると聞きます。

撮影が中断されるということは、撮影中の話数が放送の話数に近づき、追いついてしまう可能性すらあるということで、ネットや視聴者の反響と撮影中の話数とのタイムラグが短くなりますよね。

『M』の場合は第4話の制作で自粛を受け中断しており、今夜の放送では第1話の振り替え放送になるようです。

放送話数が未定だったこのドラマが残り何話の想定で構想されていたか分かりません。

しかし、このまま自粛要請が続けば繰り返し放送される1~3話に視聴者の中で田中みな実の役のインパクトだけが一人歩きし、より田中みな実をみるためのドラマになっていくでしょう。

私としては願ったり叶ったりです。

制作はそれに応えるようフィードバックが直で4話、5話へと、かなり濃厚な形で落とし込まれていくように思います。

ゼロワンも次回のレース生地のトップスで刃渾身の私服シリーズは打ち止めになるのではなく、何話か越しに復活、さらにはより研ぎ澄まされた肩出しに匹敵するファッションが毎週の見所に化けるかもしれません。

 

今のご時世、「とにかくバズってしまえば勝ち」みたいなところがずっとあって、バズらせるためにキャラ立ちさえしてしまえばシナリオの出来は二の次で良いという風潮は特撮やドラマのみならず、アニメやゲームにも見られます。

もしかすると作り手も受け手も作品から檀黎斗のような大当たりのネタキャラが排出されることに貪欲になっているのかもしれません。

ネタキャラの大成は一攫千金の夢なのです。

そういった意味では”職場に恵まれなかった”キャラを失った刃に”私服がちょいエロ路線“を与えて、ゼロワンが進行させるのはある意味で正解なのでしょう。

しかし、ネタに特化していく傾向はその作品のみならず、シリーズや同ジャンルの品位を下げる恐れがあると思います。

(何度も言いますが、エイベックス歌姫のドラマなんてどうなったって良い)

 

ただ、檀黎斗である程度の実績を積んだる変顔や負け顔で、冴えないシナリオや急すぎる展開を結果的に誤魔化してしまうのは作品として、特撮シリーズの代表格どうなんでしょうかね。

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それじゃあ、安易な歌手の半生をろくに振り替える気の無いネタドラマのようなものじゃありませんか。

垓に言いなりだった理由がチップで送られる頭痛以外に特になかった刃も、好評だった肩出しコーデを付与し続けることで活路を見出だそうとするのであれば、それは作品としての志の低さが手遅れなところまできているかもしれません。

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「ゼロワンはやってることがドライブやエグゼイドの刷り直し」という批判もよく目にします。

そうやって過去の成功体験や少しでも反応の良いものに飛び付き、世界観やキャラのブレに目を止めず、なんとか第2の檀黎斗と呼べる何かを生み出すことに躍起になって、ゼロワンの推進力に変換させようとする下衆なスタンスを続ければ、いずれ空中分解してしまうと思うのですが。*3

 

 

 

さて。

今夜、ドラマ『M』は、ラジオでドラマの出来について毒を吐いた伊集院氏の副音声付きで1話の振り替え放送です。

田中みな実演じる変態眼帯秘書が気になった方は是非。

5月9日(土)は、視聴者の皆さまから反響が大きかった「M 愛すべき人がいて」の第1話に、スペシャルオーディオコメンタリーとして、このドラマに大注目して下さっている伊集院光さん、古市憲寿さんの“相当マニアックで香ばしい番組解説”に加え、第4話以降のみどころも初出しにして、第1話のリミックスバージョンとしてお届けして参ります。

www.tv-asahi.co.jp

 *4

 

*1:ルパパトから続くメイン監督の譲れない性癖

*2:脱線し過ぎたかもしれません

*3:着実にゼロワンという名の飛行機のパーツは空の上でポロポロと外れて落ちている

*4:これ、何のブログなん?